電車の中のおしゃべり
■その1
いつもなら空いているシーサイドライン、土曜日の午後は込んでいました。左右の窓際にある3人掛けの二つの椅子には、若い男どもが二人ずつ座り、そして前の運転席に二人、6人で大きな声でおしゃべり。まるで自分たちだけしかいないような感じで盛り上がっています。私はそんな様子をドアの所に身を寄せ、なんとなく見ていました。もしかしたら非難めいた目つきだったかもしれません。
すると、一人が私に向かって合図をしました。席を詰めてくれたのです。ありがとうと言って座りながら、「暑い」と独り言を言いました。それを見ていた向かい側に座っていた一人が「なんですか」と聞きました。私が咎めていると思ったのでしょうか。大きな声で「暑いですね」と言うと、「ほんとうに暑いですね」と返事があり、横から「どうぞ」と飲みかけのペットボトルが差し出されました。そこで、皆が大笑い。
男たちは皆、背が高く、頑丈な体つきです。そこで聞いてみました。
「皆さん、何のグループですか」
「ビーチバレーをやっています」
大学時代にバレーボールをやっていた仲間で、今日は久しぶりに会ったようです。
「あいつは山口から来たんですよ」
指を差された男はにこにこしています。
「山口は金子みすゞさんの所ですよね。昨年行ってきました」
「何もない所でしょ」
「松下村塾も行きましたよ」などと会話が弾みました。
何と、気が付いたら私も若者たちの一員のように、大きな声でおしゃべりをしていたのです。“マナーを知らない若い男ども”と思っていたのが、会話に加わることにより、“陽気な若者たち”というふうに彼らを見る目が変わっていました。
ほんの5,6分のことでしたが、いい年のおばさんが若いやつといっしょになって大きな声でしゃべって…周りの人から、そう見られてもしかたのないことですね。
■その2
午後7時過ぎの帰りのシーサイドラインです。今日は金沢花火大会を見に行く人で満員です。でも、例年よりは空いていて、吊革もつかめました。前に座っていた浴衣姿の若い女性二人は、私たちを認めると、直ぐに立ち上がり、どうぞ、と言ってくれました。直ぐに降りるのですが、せっかくの好意なので、甘えさせてもらいました。
浴衣がよく似合いますね、と話しかけました。二人は、今年は雨が多く、花火大会に行けなかった。ネットで調べたら金沢の花火大会があると知って、これが今年最後だと思い、目黒からやってきたと教えてくれました。向こうにお店はありますかと聞かれて、なかったと思うと答えると、何も買っていないと言う。丁度、アンパンを持っていたので、よかったら、と差し出しました。今度は夫が、これもどうぞ、と買ってきたビールを1缶進呈。彼女たちは大喜び。帰り際に塩飴を一つずつ手のひらに載せると、「たくさん、差し入れをありがとうございました」とにっこり。
たった8分間のひととき、とても楽しい時間でした。我が家のベランダから夜空に映える花火を見ながら、彼女たちと一緒にいるような気持になりました。シートを持ってきてないけど、浴衣はクリーニングに出すから、多少、汚れてもいいと言っていたけど、どこで見ているやら。