おいしいに決まってます
私はJRに片道約50分間乗っています。昨日の帰りの電車の中です。ちょっとうれしく、そして楽しいことがありました。
電車に乗り込み、吊革につかまると、前に座っていた若い二人連れの内の男性が、どうぞ、と席を立ってくれたのです。女性と楽しそうに話していた様子。恐縮しながらお礼を言って座りました。隣の女性に、ごめんなさい。せっかくおしゃべりをしていたのに、と謝ると、笑いながら、いいえ、そんなにおしゃべりしてないんですと言ってくれました。気遣いがうれしかったです。
私はいつも持ち歩いている塩飴を二つ、お礼ですと言って、彼の顔も見ながら彼女に渡しました。塩飴だ、と彼女は喜んでくれたのですが、そのとき、つい、口が滑りました。
「でも、あんまりおいしくないんだけどね」
二人ははじけるように大笑い。その後、男性がこんなふうに言ってくださったのです。
「ぜったい、おいしいに決まってますよ」
なんと、気持ちのよい人たちでしょう。とっても幸せな気持ちになりました。
さて、いいことがあると続くものです。二人が降りて、しばらくたったとき、親子連れが乗ってきました。小学校3年生ぐらいの女の子が私の横に座りました。すくっとした女の子だなと感じました。本を読みながらも「踊り」という言葉が何回か耳に入ってきます。気になりました。思い切って聞きました。
「もしかしたらバレエをやっているの?」
女の子はうれしそうに「そうです」と答えてくれました。髪をきちんと上に上げ、顔つきがすっきりしています。さも、バレエをやっているなという雰囲気です。今日は発表会があって、課題曲を踊ったと教えてくれました。課題曲は私の知らない曲でした。お母様と少女の間にある大きなふわっとした袋には今日着た衣装が入っているとのことです。
私は小さい頃からクラシックバレエを見るのが好きでした。近所の「護国寺」で初めてバレエを見たとき、きれいだなあと思いました。彼女は4歳から習っていると言います。お母様のお友達がバレエをやっていて、一緒に発表会を見てから、習いたくなったと教えてくれました。やはり、幼いときに、見たり、聞いたり、動いたり、体験したりする機会を与えるって、大事なんですね。
私の友人が高校1年でバレエを始め、子どもが生まれると、一緒にバレエ教室に通い、今でもカルチャースクールで踊っていると話すと「私は死ぬまで踊りたいです」と決意を示してくれました。
「大きくなったら『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』を踊れるようになるわね」
「はい、主役をやりたいです」
なんてすてきでしょう。サインを貰っておけばよかったなあ。
大人になった彼女が大きな舞台で踊るのを見てみたいなあ…。
見かけと違って、少しおっとりした話しぶり、けれど、ちゃんと自分の考えを持ち、しっかりした意思を持っている少女。二人が電車を降りるとき、振り返ってくれたので、さようならと言いました。未来のバレリーナの笑顔が可愛かったです。