布施明のコンサートの帰り
文京シビックホールで布施明のコンサートに行き、その帰りのことです。後楽園駅から乗った地下鉄は満員でした。吊革につかまり、立っていると、前の若い男性が、さっと、立ってくれました。せっかくなので、ありがとうございますと言って座りました。その内、私の隣が空いて、彼も座り、ホッとしました。
降りるとき、どうしようかなと思ったのですが、ありがとうございましたと言って、塩飴を一粒、彼が抱えているバックの上に置きました。振り返ると、彼は笑顔を浮かべてこう言ってくれました。「どうぞ、お気をつけて」 飛び切りの笑顔でした。もちろん私も飛び切りの笑顔を返しました。
その後は東京駅でJRに乗りました。丁度、二つ分の座席が空いていました。これから1時間近く乗るので、座れるのはとてもありがたいことです。
気が付くと、私の斜め前に一人の男性が立っていました。大きなカバンを提げています。年のころは私より少し上に見えます。どうしようかなと思っていると、次の駅に止まる前に向かい側から立ち上がった女性が見えました。人の間からのぞくと、いちばん端の席が空いています。私は男性の袖を軽くと、「前の席が空いてます」と小声で伝えました。男性は後ろを振り返り、会釈すると、空席の前に立ちはだかっている人をかき分け、席に座りました。
その男性は降りるとき、私と目が合うと、にこっと笑って頭を下げました。親戚のおじさんのような親しみを感じてしまいました。
布施明の歌は素晴らしかったです。声も衰えず、それどころか声量が増したよう思えました。
「シクラメンのかほり」「霧の摩周湖」など、若い頃にはやった歌は「やはり名曲だなあ」と聴きほれ、最後の2曲「トゥーランドット 誰も寝てはならぬ」「マイウエイ」は圧巻で、息を詰めて聴き、酔いしれました。